星景写真に関する考察(22)

埼玉県北部は厳しい残暑が続いていますが週初めから秋を告げるツクツクボウシやコオロギが鳴き出していますから秋が近いかも。さて、本日は、8月9-10日に遠征した画像ネタが少なくなりましたから過去画像紹介と『星景写真に関する考察』を更新いたします。

まずは、過去画像の紹介です。

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撮影日時:2015年8月8日(22h47m 露出:8sec×4枚加算平均合成)
撮影地:渋峠
カメラ:ニコンD810A(ISO12800)
レンズ:AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G (F2.8)
レタッチ:Nikon Capture NXD+Nikon Capture NX2+ステライメージ Ver.7にて合成

撮影当日、雲海が長野市の光害を遮蔽したおかげで、バックグラウンドが光害カブリの無い理想に近いニュートラルグレーに仕上げることができました。

渋峠からサソリ座のアンタレスが沈む方向には穂高連峰が存在します。

その穂高連峰に発生した遠雷がアクセントになり、神秘性が増幅したように思います・・・。


それでは、『星景写真に関する考察』の更新です。

突然ですが、NHK総合の『チコちゃんに叱られる!』という番組をご存知でしょうか?

この『チコちゃんに叱られる!』は、5歳の女の子チコちゃんの素朴な疑問に答えられない大人は「ボーっと生きてんじゃねえよ」と叱られるという爆笑雑学クイズ番組で平均視聴率12~13%を取る人気番組として各方面で話題になっています。

そこで、今回の『星景写真に関する考察』は、『チコちゃんに叱られる!』をオマージュする形で星空撮影の素朴な疑問について考察してみます。

それでは、星空撮影の素朴な疑問として、『星空撮影で何故、赤色ライトを使うのか?』について考察いたします。

まず、眼について考えます。

ヒトの眼は、「炎天下の昼間の明るさ10万ルクス」から「星明りの1/1000ルクス」まで、約1億倍の明暗変化に対応できるとされています(図1参照)

しかし、昼間の明るい雰囲気においては、「物の形と色がはっきり見える」のに対し、夜間の暗い雰囲気では「物の明暗だけがおぼろげに見える」状態で見え方が違ってきます(図1参照)。

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この見え方の違いは、網膜の光を感じる視細胞(しさいぼう)が2種類あることに由来します。

明るい雰囲気で色を認識する視細胞を錐体(すいたい)細胞と呼び、暗い雰囲気でわずかな光を感じる視細胞を桿体(かんたい)細胞と呼びます。

つまり、見え方の違いは、明暗変化にともない網膜は2種類の視細胞を自動的に切り替えて対応しているためになります。

そして、この網膜の明暗変化対応において視細胞を自動的に切り替えて感度を変化させる機能を光順応と呼びます(図2参照)

この光順応は明順応暗順応の2種類に分類され、暗いところから明るいところへ目が慣れることを明順応と呼びます(図2参照)。

明順応は、網膜上に存在するロドプシンと呼ぶ光感知タンパク質を分解させて順応するため順応時間は30~60秒かかるとされています(図2参照)。

それに対して、明るいところから暗いところへ目が慣れることを暗順応と呼びます。

暗順応は明順応で分解したロドプシンが再合成することで順応するため順応時間は30~60分かかるとされています(図2参照)。

ヒトの眼の光順応は、ロドプシンの分解と再合成を繰返すことで、明暗変化対応を維持していることになります。

蛇足になりますが、暗順応時のロドプシンの再合成を早める補助物質としてアントシアニンが知られていますから、星空撮影時はアントシアニンのサプリメントが有効になります。

この他に、物事がめまぐるしく変化することのたとえで『猫の目のよう』と云う慣用句が使われますが、これは猫の目が明暗変化により、瞳孔(どうこう)が細くなったり丸くなったりすることが由来となった慣用句です。

この猫の目の明暗変化に対応した瞳孔の変化は、ヒトの眼でも起こり瞳孔径は2~7mmの間で変化するとされています(図1参照)。

そして、この瞳孔径を変化(面積変化)させることで眼に入る光量を調節していて、この瞳孔径変化を瞳孔反射と呼びます(図3参照)。

ここまでをまとめるとヒトの眼は、前述の網膜による光順応(感度の調節)瞳孔による瞳孔反射(光量の調節)を連携させて明暗変化に対応していることになります(図3参照)。


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また、前述したヒトの眼の暗順応時は、赤いものは相対的に暗くなり、青いものは相対的に明るくなるという現象が起こり、これをプルキンエ現象と呼びます(図4参照)。

図4に示したCIE標準視感度曲線は明所と暗所における波長と感度の関係を示しており、暗所では620nm以上の波長領域感度が0となり赤色光に鈍感になることが分かります(図4参照)。

このことから、暗順応に影響しない620nm以上の波長領域である赤色光は、暗順応維持に適していることになります。

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さて、星空撮影においてカメラ操作や星図等を見るためには照明が必要となります。

しかし、通常照明では、せっかく暗順応して星が見やすくなった眼が明順応してしまい再暗順応するのに30分あまりを要してしまいます。

つまり、暗順応維持に適している赤色照明は星空撮影において最適な照明となります。

ここまで長々と説明しましたが、『星空撮影で何故、赤色ライトを使うのか?』の回答は、「星が見やすくなった眼が維持できるように暗所で鈍感になる赤色光照明が必要になる」になります(図5参照)。

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星空撮影以外でもクルマのテールランプが法令で「後面の2か所に赤色の灯火をつけること」と決められているのは同じ理由によるもので、暗所で鈍感になる赤色光は後続運転手の目にとても優しいのです。

そして、『星空撮影で何故、赤色ライトを使うのか?』と云う当たり前で、ふだん深く考えない素朴な疑問が明確になることは天文愛好家のマナー向上の啓蒙に、つながるのではないでしょうか・・・。

しかし、星空撮影ではデジタルカメラモニターは赤色にできませんから構図確認、ピント確認時は、モニターの明るさを最小値に設定し、数秒で確認できるようにしたいものです(明順応時間は30~60秒かかりますから通常光の場合は10秒未満に止めたいものです)。



ここで、考察した「ヒトの眼について考える」ことは新規性、進歩性のある星空画像創出の戦略策定に大切であると考えて丁寧に説明しましたから、次回の『星景写真に関する考察(23)』では、何故、「ヒトの眼について考える」が新規性、進歩性のある星空画像創出の戦略策定に大切であるかについて考えてみたいと思います・・・。




星景写真に関する考察(21)
URL:https://05401218.at.webry.info/201804/article_18.html

星景写真に関する考察(20)
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星景写真に関する考察(19)
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星景写真に関する考察(18)
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星景写真に関する考察(17)
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星景写真に関する考察(15)
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星景写真に関する考察(13)
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星景写真に関する考察(12)
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星景写真に関する考察(10)
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星景写真に関する考察(9)
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星景写真に関する考察(8)
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星景写真に関する考察(7)
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星景写真に関する考察(6)
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星景写真に関する考察(5)
URL:https://05401218.at.webry.info/201412/article_4.html

星景写真に関する考察(4)
URL:https://05401218.at.webry.info/201208/article_7.html

星景写真に関する考察(3)
URL:https://05401218.at.webry.info/201208/article_6.html

星景写真に関する考察(2)
URL:https://05401218.at.webry.info/201208/article_5.html

星景写真に関する考察(1)
URL:https://05401218.at.webry.info/201208/article_4.html



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